製品を製造・管理するうえで必須となるのが品質管理です。
品質管理の指標として「AQL」といった方法があり、弊社の製品もこちらの規定を基に管理しています。
今回はAQLの活用方法やメリットなど、いまさら聞けない基礎を紹介します。
AQLとは?
AQLとは合格品質水準のことで、JIS規格に定められています。
大量に製造する工場では全ての製品を検査(=全数検査)することは難しいため、製造した総数からいくつか抜き取って検査を行う「抜取検査」が多く用いられています。
抜取検査と言っても、ただ適当に抜き取って検査しただけでは不十分になり得ます。
そこで、対象ロットの品質を保証するためにはいくつを抜き取って検査するべきかを統計学に基づき定められたのがAQLです。
AQL ・・・「 Acceptance Quality Limit」の略で、合格品質水準を意味する。
JIS規格・・・日本産業規格を意味し、 日本国内産業の標準化を目的として制定された規格である。
「Japanese Industrial Standards」の略。
AQLの方法
AQLの抜取検査には指標があり、2種類の専用の表に条件を当てはめて行うことができます。
※JIS規格「JIS Z 9015」より抜粋
表1_サンプル文字表
●検査水準を決める
検査水準は7種類あり、発注側からの特別な指定がない場合は「通常検査水準Ⅱ」を使用する。
特別検査水準:S-1・S-2・S-3・S-4
通常検査水準:Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ
●ロットの大きさを決める
対象となるロットの製品数(=ロットサイズ)を確認する。
●サンプル文字を決める
検査水準とロットサイズを専用の表に照らし合わせ、「サンプル文字」を決定する。
表2_主抜取表
●検査の程度を決める
ゆるい検査・なみ検査・きつい検査の3つから検査の程度を決める。
寸法測定と予兆管理|測定のことを“即”知りたい「ソクシリ」 (keyence.co.jp)
https://www.keyence.co.jp/ss/imagemeasure/sokushiri/news/003/index3.jsp
●抜取数を決める
決定した検査程度の専用表より該当サンプル文字を確認すると、抜取数(=サンプルサイズ)が決定する。
●不良の許容割合を決める
ロットサイズに対して、何パーセントの不良を許容するのか(AQL=1.0などの数値)を決定する。
●検査結果によりロットの合否を判定する
サンプルサイズ全数を検査し、そのうちの不合格数によりロットが出荷に値するか判断する。
表の使用例
<サンプル文字表>と<主抜取表>を以下の条件と仮定してみてみましょう。
検査水準:通常検査水準Ⅱ
ロットサイズ:1,000台
検査の程度:なみ検査
AQL数値:1.0
この場合、<サンプル文字表>で決定する文字は「J」です。
次に<主抜取表>へ進み、「なみ検査」の表を使用します。
なみ検査の表から「J」を確認すると、右側に「80」が記載されているのが分かります。
この「80」が実際に抜き取って検査を行う製品数となります。
次に不良の許容割合を選択しますが、今回は「AQL=1.0」とします。
「AQL=1.0」とは、今回の条件とするロットサイズの1,000台に対して1%となる10台の不良は許容するという意味です。
表の「J」と「80」がぶつかった所に「2」と「3」が記載されており、不良数を表しています。
「Ac」が合格、「Re」が不合格と判断する不良数です。
以上のことを総合すると、今回の条件においての抜取検査は
AQLのメリット
製品を生産したり出荷したりする際、製品不良は売り手と買い手どちらにとっても避けたいところですが、AQLは抜取検査のため全数検査と比べるとどうしても不良品が混ざってしまう可能性があります。(AQLの場合でも条件によっては全数検査になることもある)
しかし、AQLを活用することで得られるメリットがあるのです。
メリット①
耐久テストなど製品としての価値がなくなってしまう検査ができる
耐久テストの場合、対象箇所が使用できない状態になるまで行う必要があります。そのような検査方法を全数検査で行うと当然出荷できる製品がなくなってしまうことになります。
AQLを基に管理することで必要な検査を必要数行うことで品質が保たれます。
メリット②
検査項目を多くすることができる
品質を保つために多くの項目を検査したくても、全数検査ともなると相当な時間と労力が必要となるため「必要最低限の検査しかできない」なんてことになり得ます。 AQLで検査数を絞ることで、より詳しい検査を行うことができます。
メリット③
検査に費やす時間を短縮することで製品の品質を上げることができる
抜取検査にすることでロット全体の検査を早く終えることができます。その結果、製品の改善点を早期に発見でき、次のロット生産時に修正することができます。
さいごに
大量の製品をつくる工場や企業の多くがAQLを活用しています。
新規製品であったり、継続生産している製品であれば過去の不良率実績などを考慮し、AQLを設定する必要があり、弊社でもAQLに基づき品質の管理や維持に努めています。