電磁波の影響を試験する?EMC試験とは

電子機器が使用される場所には、他の多種多様な電子機器が使用されていることが多く、電磁波の影響を与えたり、受けたりしてしまいます。

その影響によって電子機器が誤作動しないか確認するために行う試験を「EMC試験」と言い、EMI試験とEMS試験の2種類あります。

今回は、この2種類の検査の違い、試験の目的や方法について解説します。

EMC試験とは

EMCは「電磁両立性」という意味のElectromagnetic Compatibilityからなる言葉です。

電子機器のもつ電磁波によって互いに干渉しないか確認する試験をEMC試験と呼びます。

EMC試験のなかに「与える側」のEMI試験「受ける側」のEMS試験があります。

EMI試験(エミッション試験)

EMI試験Electromagnetic Interference


「放出」という意味をもつ、エミッション試験(Emission)と呼ばれる。

目的

電子機器から発生する電磁波が規定のレベル以下であり、周辺にある機器に影響を与えないか確認するために行います。

種類と方法

種類試験条件試験方法
放射エミッション周波数
9kHz~40GHz
空間に放出される電磁波を測定する試験で、機器から3mまたは10m離れた位置に設置したアンテナで受信し、強度を測定する。
伝導エミッション周波数
9kHz~30GHz
機器の電源端子から放出される電磁波を測定する試験で、アンテナではなく疑似電源回路網を使用して電源線を伝わる電磁波の強度を測定する。
高調波エミッション電圧
100~240V

電流
20Aまで
スイッチング電源、テレビ、パソコン、エアコン等のインバータ回路を含む製品の電流波形に生じた歪みが原因で、誤動作や発熱につながることがある。
そのため、電源線から配電網に伝わる高調波電流を測定する。
電圧変動エミッション電圧
100~240V

電流
20Aまで
温度差を生じさせる冷蔵庫やホットプレートなどは、動作した瞬間に急激な電流変化が生じるため、発生した電圧変化量を測定する。

EMS試験(イミュニティ試験)

EMS試験Electromagnetic Susceptibility


「免疫」という意味をもつ、イミュニティ試験(Immunity)と呼ばれる。

目的

周辺にある電子機器が発する電磁波により影響を受け、誤作動を起こさないか確認するために行います。

種類と方法

種類試験条件試験方法
放射イミュニティ周波数
26MHz~6GHz
放送局や無線機器などから放射される電磁波に耐えうるか試験するため、試験範囲の周波数をアンテナから放射して行う。
静電気イミュニティ電圧
0.2kV~4.8kV
帯電している状態の人体などが電子機器に触れた場合、放った静電気によって対象の電子機器が影響を受けないか試験する。
サージイミュニティ電圧
0.5k~15kV
自然界で起こり得る大きな電圧や電流、落雷によって電子機器が影響を受ける可能性がある。
そのような現象が起こった際の影響を調べるため、異常に高い電圧を瞬間的に電子機器に与え、試験を行う。
伝導性イミュニティ周波数
150kHz~80MHz
電源や入出力ケーブルへの妨害、電流による影響を確認するため、無線信号にあたる周波数で試験する。
電磁波は低い周波数ではケーブルを介して結合する傾向が強く、放射アンテナではなくCDNやEMクランプを用いる。
電源周波数磁界イミュニティ周波数
50~60Hz
電磁波に囲まれた磁界の中に試験対象機器を置いて動作を確認する試験である。
※試験対象にホール素子・ダイナミックマイク・磁界をセンシングするセンサー等が使用されている場合のみ行う試験方法

EMC試験の重要性

電磁波と言っても目に見えないため、EMC試験が本当に必要なのか疑問に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、知らず知らずのうちに私たちは電磁波の影響のために行動しています。

例えば、電車の優先席周辺では携帯電話の電源を切ったり、飛行機の離着陸時には機内モードにすることを求められますが、これは携帯電話が放出する電磁波が、心臓のペースメーカーや飛行機の計器に悪影響を及ぼさないためです。

一般家庭で使用するような電子機器でも同じように機械同士の電磁波により誤作動を起こす可能性があります。

周辺機器の電源が勝手に点いたり、誤作動を起こして発火してしまったり、消防無線を妨害してしまうなどの危険が発生することも考えられ、損害賠償のみならず生命の危機を脅かすことにもなりかねません。

そのようなことが起こらないためにも、求められる試験をしっかり行いましょう。

さいごに

EMC試験には、製品によって行うべき試験の種類や規格が決められています。

その規格に合わせて、必要な試験を行うことが重要です。

しかし、その規格や試験条件を理解して実行するには専門的な知識や環境が必要となりますので、製品開発時には専門機関に相談することをおすすめします。

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