半導体って何?不足している理由とは

ニュースで何度か取り上げられている半導体不足ですが、どうしてここまで「不足」で騒がれているのでしょうか。

そもそも「半導体」とはいったい何で、何にそんなに必要なの?と感じている方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、今もなお不足している半導体についてご紹介します。

半導体とは?

半導体は小さく、様々な電子機器の中に埋め込まれて使用されています。

名前の通り半分は「導体」と呼ばれる電気を通す物質で出来ています。そしてもう半分が「絶縁体」という電気を通さない物質です。

電気を通す物質と電気を通さない物質の相反するもので出来ている半導体ですが、中間の性質を持っていることで電流を制御することが可能になっています。

製造工程

①    フォトマスク作成
フォトマスクはパターニングの原版。基盤にパターンを転写するために使用する。
②    ウエハ製造
ウエハは薄く円盤状にした半導体の薄い板で、半導体の主要構成部材。
シリコンの単結晶をワイヤーソーで薄くスライスして研磨する。
③    ウエハ表面を酸化
ウエハを高温の酸素に晒すことで、表面を酸化させる。
表面の酸化した膜は絶縁層となり、トランジスタの構成要素。
④    成膜
回路のベースとなる薄膜層を酸化させたウエハ表面に形成する。
⑤    フォトレジスト塗布
フォトレジストとよばれる感光剤を塗布する。
これにより光に反応して回路パターンを焼き付けることが可能になる。
⑥    露光
ウエハ表面にフォトマスクと縮小レンズを通して回路を焼き付ける。
露光装置は微細な線を正しく焼き付けることが重要で、髪の毛の1/10,000もの細かい線を露光する精度が必要となる。
⑦    エッチング
エッチングでは化学反応を使って薄膜を配線等の形状に加工をする。エッチングにはドライエッチングとウェットエッチングがあるが、半導体ではドライエッチングが使われることが多い。
⑧    ダイシング
ウエハを切削してチップ化する。切り離されたチップは「ダイ」と呼ばれる。
⑨    パッケージング
チップを所定の位置に固定し、金属等で接続した後、損傷や腐食を避けるためセラミックや樹脂などのパッケージで封入する。ダイをパッケージングすることでICチップが出来上がる。

半導体が使われているものは?

パソコンやスマートフォンは半導体が使われている製品として有名ですが、実は生活のなかでも多くの半導体を使った製品があります。

家庭内  エアコン
  炊飯器
  テレビ
  洗濯機
  LED電球
  ゲーム機
公共の場  銀行ATM
  自動車
  電車運行
  インターネット/通信

いくつか例を挙げただけでも半導体を使用しているものがこれだけ日常にあふれています。

デジタル社会が進む近代で生活する私たちにとって、切っても切り離せない存在であり半導体不足は他人事ではない問題なのです。

どうして世界的に不足しているのか?

半導体不足の1つの要因は「需要」です。

2019年末に始まった新型コロナウイルス(以下、コロナ)流行により、多くの人がリモートワークなど自宅で過ごす時間が増え、パソコンやスマートフォン、ゲーム機などの電子機器の需要が高まりました。

しかし、コロナは需要を高めるだけでなく、供給を下げる要因にもなりました。

  • 半導体生産の主要な各都市がロックダウン

新型コロナウイルス流行により、アメリカ・中国をはじめとした主要国の多くの都市でロックダウンがされる。そのため、生産がストップせざるを得ない結果になった。

 

  • コロナ感染や都市のロックダウンによる港労働者の不足

コロナ禍で多くの国、都市がロックダウンになったり、港労働者のコロナ感染や濃厚接触者などにより、スムーズにコンテナを下ろすことが困難になった。

 

  • 港の荷下ろし渋滞によりコンテナ確保の困難

コロナ禍による労働者不足、その後は止まっていた物流が一気に動き出したこともあり、コンテナを確保することが難しくなった。コンテナの価格も高騰した。製品を輸入するのに、通常より1ヵ月遅れることが日常的に発生する結果に。

~コンテナについての記事はこちら~

コロナの原因だけであれば、ここまで大きく取りざたされることはなかったかもしれません。

前述の原因と並行して以下のようなことが発生したため半導体不足に拍車がかかりました。

  • 半導体主要国であるアメリカで大寒波による大規模停電

エネルギー供給の主要地域であるテキサス州に記録的な降雪を伴う厳しい寒波が起こり、大規模な電力不足になり、半導体製造工場も停止が余儀なくされた。

  • 半導体製造会社の工場で火災

日本の半導体生産会社であるルネサスセミコンダクタマニュファクチュアリング(ルネサスエレクトロニクスの子会社)の那珂工場で火災があり、約1カ月生産がストップした。

火災の起きた生産棟では自動車に使用する半導体を生産していたため、自動車の納期が大幅に遅れる要因となった。

  • 半導体の原材料(レアガス・レアメタル)生産国のロシアとウクライナによる戦争

ウクライナは半導体に必要なレアガスのネオンガス、クリプトンガス、キセノンガスを輸出しており、世界輸出の比率は順番に約70%、約40%、約30%と多くを占めている。

また、ロシアはレアメタルの世界シェアが高く、ニッケル約50%、パラジウム約40%、チタン約30%、アルミ約25%にのぼる。レアガス、レアメタルの世界シェアが高い2カ国の戦争の被害は半導体産業にも影響している。

  • 電気自動車普及化により需要が上昇

2035年までに電気自動車を100%普及するという動きがあり、半導体が多く使われる電気自動車の普及は更に半導体不足に繋がる。

これだけの要因が重なり、需要が増えているにもかかわらず、供給を増やすことができず生産が追い付いていません。

そのため、企業や業界だけに留まらず国をも超えて半導体を取り合いしているのが現状です。

さいごに

半導体の不足は2022年に緩和されるという見解もありましたが、残念ながら2022年の半分以上が経過した現在もまだ解消されていません。

しかし、2年後の2024年が半導体不足の転換期になるのではないかと言われています。

アメリカや台湾などの半導体製造会社が生産強化を図り、2024年からの稼働を目指しているためです。

半導体は「シリコンサイクル」と呼ばれる約4年の周期で好況と不況を繰り返しています。

今後も経済に大きな影響を与える半導体業界に注目が集まります。

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